名古屋高等裁判所 昭和24年(控)120号 判決 1949年8月25日
被告人
淸川義夫
主文
本件控訴は之を棄却する。
理由
前略
然しながら原判決挙示の各証拠を綜合すれば、被告人は昭和二十四年四月四日午前十一時頃三重縣海津郡石津村大字境二千九百六十八番地農業岡田小一の挙家留守中土足のまゝ座敷に上り箪笥から衣類を窃取しようとして抽斗内から衣類数点を取り出した処へ家人が帰宅したのでその目的を遂げずして屋外に出たものである事実を認め得る。だから仮令被告人が岡田小一方を訪問した最初の目的が金銀等買出であつたとしても、同家人の不在に乘じ窃盜の目的を以て座敷に土足のまゝ上つた以上、それは住居侵入罪を構成することは勿論である。記録を精査するに、原判決には事実の誤認はなく、所論は被害人の窃盜未遂の点を否定し、窃盜未遂の所爲のない事を前提として住居侵入罪も亦構成しない旨主張するのであつて到底採用することは出來ない。
よつて刑事訴訟法第三百九十六條に則り主文の通り判決する。